漫才師として八面六臂の活躍を見せるこいで氏。よしもとのボケ担当芸人が集まった「なにわボケの会」では、メンバーとともにさまざまなイベントを行うなど精力的に活動している。また、同会に所属する芸人の多くがクリエイティブなセンスを持っており、芸人が制作した作品を展示する合同展を開催することもしばしば。その中でも、こいで氏のイラストはインパクト抜群。その味のあるイラストで漫画家デビューを飾るほどだ。そんな多才なこいで氏の頭の中を覗いていきたい。そもそも、なぜ漫画家として活動を始めたのだろう……。

「漫才のネタを考える中で、『これは漫画にした方がおもろそうやな』っていうネタが思い浮かんだんですよ。それで、実際にギャグ漫画を描いて出版社に持ち込んでみたんです。そうしたら出版社の方から『こっち(ギャグ漫画)も良いんですけど、子育て漫画を描いてみませんか?』っていう話がきて。もともと子どもネタは何個か持ってたんですよ。というのも、僕は漫才のネタ帳以外にも、何か普段の生活で起こった出来事とか、面白かったり思い出に残ったこととか、子どもとのこととかを書き溜めたメモ帳みたいなものを作ってて。それはもう、どこかで発表するっていうよりは、子どもが大きくなった時に教えてあげようかなっていうくらいの気持ちで作ってたんです。それで、今回の話をもらった時に、そのメモ帳から(子育て)ネタを作って。それが今の作品(パパは漫才師)に繋がっていったって感じですね。『(デジタル漫画サービス)サンデーうぇぶり』で連載させてもらって、最近では書籍化までしてもらって。そういえば(相方の)てつじが『油断して読んだら泣きそうになったわ』って言うてました(笑)。僕が描く漫画なんで、どういう内容か知らない人は奇抜なストーリーって思うみたいです。それが実際は、笑いの中に家族のほっこりした部分を描いたりしてるんで。テレビのイメージだと、もしかするとほっこりした漫画を描くとは思えないかもしれないですね」

子どもの成長記録が漫画に。筆者もシャンプーハットファンを公言しているが、確かにこいで氏が描いた漫画とだけ聞かされると『インパクトのあるイラストにエッジの効いたお笑いの漫画』という印象を持っていたかもしれない。今では書籍化もされた『パパは漫才師』だが、web連載をスタートするまでに苦労はなかったのだろうか……。

「漫画を描くことが決まった時、『web連載に向けての準備を進めないとあかんなぁ』と思って、それでまずパソコンでスクリーントーンを入れるには『CLIP STUDIO』っていうソフトウェアが良いと教えてもらったんで、『誰か(CLIP STUDIO)使えるやつおらんかなぁ』ってマネージャーに聞いたら、『蛙亭の中野っていう芸人が使えるらしいですよ』と。それからすぐに電話を掛けたんです。(CLIP STUDIOの)使い方を教えてもらおうと思って。でもよく考えたら、僕パソコンが使えへん(笑)。だから中野と一緒に、パソコン買いに行く所から始めたんです。もともと一人で(漫画を)描こうと思ってたんで、中野にCLIP STUDIOの使い方を教わって描いていこうと。でもよく考えたら『中野に手伝ってもらった方が早いやん!』って気づいた(笑)。なんでって、既に使えるんですもん中野は、CLIP STUDIOを(笑)。その辺りから一人で漫画の制作は無理やなと思いだして。そこから森本大百科にも加わってもらうことになるんですけど、森本は、僕が参加してる『なにわボケの会』っていうボケ芸人ばかり集まる会があって。そのメンバーで色んな作品を出展する合同展を開いた時に参加してもらったのがきっかけなんです。それまであんまり森本のことは知らなかったんですけど、スケジュールが空き過ぎてて一週間開催してた合同展に毎日参加してたり、出展してる作品も見たんですけど『めっちゃ上手いなっ!』ってなって。聞いたら漫画のアシスタントもやってると。それでスカウトして今の体制になった感じですね」

芸人の皆さんは多才な方が多いと聞くが、まさか漫画家のアシスタントまでいるとは。そんな出会いが重なり、現在の制作体制が構築される。しかし、漫才師として多忙を極めるこいで氏が漫画の連載、しかも週刊連載を行う時間があるとは思えないのだが……。

「漫画の制作は、まずネームっていう下描きを僕が描くんですけど、それは劇場の合間とか収録の空き時間に描いてますね。その時に描いたネームを編集の方に見てもらって、OKが出たらその絵を漫画用紙にもう少し綺麗に描く。そこから森本が背景の下描きを足していって、僕と森本でペンを入れて、最後は中野に渡して色づけをしてもらうっていう流れで作業してます。だいたい一話を完成させるのに2日くらいですかね。そんな感じで漫画を描いてるんで、今は空き時間無しです。完全に(笑)。『空き時間も漫画描いて、仕事の時間が増えたな』って言われることもあるんですけど、僕からしたら『もったいない時間が減らせた』っていう感覚の方が大きいんですよね。今までぼんやり過ごしてた時間を有効活用出来てるっていうか。だから全然苦じゃない。それよりも3人とも芸人としての活動が別々やから、スケジュールの調整が少し大変だったりしますね。3人が揃って制作するっていうのは週に1日くらいなんですけど、その1日で結構仕上げていくので。今後、テレビの露出が増えたりお笑いで何か賞を取ったりして2人が今より忙しくなったら、漫画の進行が大変になってくるかもしれないですね。それこそちょっと前に蛙亭がABCお笑い新人グランプリで優勝しかけた時は、なかなかの冷や汗もんでしたよ。『これはヤバイ』と(笑)。今年もね、あかんかったけど、キングオブコント2018で蛙亭が調子良くて、『これは決勝までいってまうなぁ』って感じやったんですよ。この時もかなり冷や汗もんでした(笑)。まぁ、こんなん言うてますけど、あくまで本業は漫才師なんで、2人の活躍は純粋に嬉しいんですけどね。『漫才活動を変えるくらいなら、漫画は描かない』っていうのが僕の中で1つのスタンスとしてあるんで。だから僕もですけど2人とも芸事を優先してほしいっていうのはありますね。冷や汗かいたりしてますけど(笑)」

常に穏やかな表情と物腰で対応してくださったこいで氏。しかしその温和な表情とは裏腹に“笑い”に対するストイックな姿勢と力強さをひしひしと感じたインタビューだった。 “漫画”という新たなツールを手に、さらに多くのファンを魅了するこいで氏。次回のvol.2では、漫画、家族、漫才、これからの目標について迫る。

さらに!

こいで氏のサイン入り<パパは漫才師の単行本>プレゼントは終了いたしました。

シャンプーハット・こいでさん インタビュー【vol.1】漫才のネタを漫画にしたらおもろそう。 そこから発想が色々広がっていきましたね。

こいでさん(シャンプーハット)

1994年に漫才コンビ『シャンプーハット』としてデビュー。 “ボケと共鳴”という全く新しいスタイルの笑いで人気を獲得し、デビュー以来テレビや劇場などで見ない日はなないほどの活躍ぶり。『パパは漫才師』で漫画家デビューを果たすなどその多才ぶりを如何なく発揮している。