百々:こんにちは。こんなにたくさん若い女性が来ていただいたのは当館としては初めてですんで、ちょっとドキドキしています。市橋さんの写真は非常に見ごたえのある世界観。これまでの仕事のことなど根ほり葉ほり聞いていきたいと思います。

 

市橋:よろしくお願いします。

 

百々:まずは僕が気なることから。何年生まれのどちら出身ですか?

 

市橋:1978年生まれで、埼玉よりの東京です。

 

百々:お父さんは何されていたんですか?

 

市橋:数学の教師です。高校の教師をしていて、定年後は嘱託で中学の教師をしています。

 

百々:お母さんは?

 

市橋;元々出版社にいまして、旅行のライターを。ガイドブックのライティングする仕事をしていました。

 

百々:写真も撮ったり?

 

市橋:はい。小さい頃から母親の取材に必ずついていって、旅をいっぱいしていました。

 

百々:それはいい環境。写真家の人にお聞きする時に、どこで生まれて、どんな環境で育って、ご両親はどんな風で…というのが、けっこうキーではあるなと思うんですよね。

 

市橋:そうですね父親は数学の教師ですが、写真部の顧問もしていました。高校の暗室に入らしてもらったり。

 

百々:なるほど。お父さんはどんな写真を撮られていたんですか?

 

市橋:風景ですね。人が入った風景。モノクロが好きだったみたいです。

 

百々:大学も行かれたんですよね?

 

市橋:武蔵野美術大学の空間演出デザイン科に入学はしたんですけど、前期の3ヵ月だけ行って中退してしまいました。

 

百々:空間演出デザインってどんなことするの?

 

市橋:舞台演出とかショーウィンドウのディスプレイとかが空間演出というらしいです。

 

百々:何で辞めたん?

 

市橋:んー。めんどくさくなった(笑)。辞めてすぐ写真を撮ろうと思って、スタジオに就職しました。

 

百々:アシスタントはどれくらい?

 

市橋:スタジオは2年半くらいで、その後カメラマンの専属アシスタントを3年しました。

 

百々:フリーになってから、いきなり仕事もらえたの?

 

市橋:最初はバイトしながらですね。バーとかで働きながら生活して、だんだん写真の仕事が増えていきました。

 

百々:初めての仕事はどんなの?

 

市橋:ちょっと変わっていて、スタジオジブリの「猫の恩返し」が公開された時に、ガイドブックみたいなものを一冊まるまる担当させてもらいました。間に挟むイメージ写真やスタッフのポートレートとか。

 

百々:へーいい仕事やね。それは恵まれてる。その時はカメラ何使ってたの?

 

市橋:その時はまだ35mmのネガカラー、コンタックスです。全部自分でプリントしました。

 

百々:当時の写真の色コントロールは、ここに展示されてる写真と色合い近い?

 

市橋:今とフィルムが違うので、もっと浅くてハイキーでしたね。フィルムはアグファを使っていたんです。3段オーバーで撮って焼き込んだりしていました。今はだいぶ落ち着いたかなと思います。

 

百々:アグファね。あのハイキーになる発色がいいよね。それで、そこから仕事するようになってコマーシャルがほとんどでしょ。スタジオに入ってカメラマンのアシスタント、独立、というプロセスは、ぜったい写真で食ってやろうって思ってたってことよね?

 

市橋:そうですね。スタジオに入った時から仕事にしようと思っていました。

 

百々:私はずっと大阪にいて、教師やったりもしてたから、街をほっつき歩いてモノクロでとにかく撮るってことばかりしていた。だから、写真で食うって発想がなかったし、むしろ自分が撮りたい写真だけを撮るのがいいと思っていましたね。

 

市橋:私も最初はそうゆう発想で撮っていました。ある時点でそこまでの才能がないんじゃないかと思ったこともあり、写真を仕事にする方向にシフトした時期がありましたね。

 

百々:コマーシャルの仕事と自分の作品撮りを、並列的にやってたんですか?

 

市橋:そうですね。作品として撮っているものが仕事に使われることがわりと多かったので、撮りためていましたね。仕事と作品の境目がなかったですし、今もそうです。

 

百々:それは立ち位置としては恵まれているよね。そうゆう人って本当に少ない。

 

市橋:幸せなことだと思いますね。

(vol.2につづきます。5 月18日(金)公開予定)

市橋織江×百々俊二対談@入江泰吉記念奈良市写真美術館 vol.1「自分の撮りたい写真だけを撮るのがいいと思ってた」 「私もそう思ってたけど、ある時点でそこまで才能がないんじゃないかと思ったこともあります」

入江泰吉記念奈良市写真美術館

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