イラストレーター・作家を社会とつなげば、クリエイティブ力はもっと上がるはず。

G_GRAPHICS INC.は、メンバー7名のデザイン会社ですが、他と違うのは自社でギャラリーondoを企画・運営していること。それに伴って、クリエイティブディレクター・アートディレクター・デザイナー・編集&ライター・イベント企画・ギャラリースタッフと、それぞれに役割が違うのも特徴のひとつですね。
もともと僕は、広告代理店や広告制作会社でグラフィックデザイナーをしていました。物作りは好きなので、充実感を持って日々の仕事に取り組んでいました。ただ、キャリアを積むに伴い、上司であるアートディレクターや、クライアントとのやり取りの中で、“自身のデザインした広告物や商品が、本来のターゲットであるエンドユーザーにどう届いているのか” という部分がなかなか実感できず、本当にこんなことがやりたかったのだろうかと思い悩むこともありました。そこで、自分が本当にやりたいことをやろうと思い、現在ondoのマネージャーをしている松木と一緒に、プライベートワークとして始めたのがフリーペーパーの制作でした。

デザインも内容も今思えばまだまだでしたが、思いの詰まったフリーペーパーの反響は思いのほか大きく、思いもかけず、仕事を依頼されるようになっていきました。ある時、パン屋をオープンしたいという方からの依頼でお店のロゴや看板、チラシなどのオープニングツールを制作した際、半分徹夜みたいな状態でなんとか納品に間に合わせ、オープン前日にお祝いに伺いました。明日から頑張ってお客さんに届けていきましょう!と、試作したパンをつまみに乾杯。肝心のパンはオープン前日だというのに、形もバラバラで完成度も低くってほんとに大丈夫かなぁって感じだったのですが(笑)でも、その時間は、今までに感じたことのないような充実感に満たされていて、その時、仕事って本来こうあるべきなんじゃないかって感じました。そして、デザインを通じてまっすぐに人と関わっていきたいと思い、独立したのが、G_GRAPHICS INC.の始まりです。

ギャラリーondoを始めたのは、デザイナーとしてイラストレーター・作家たちと関わる機会が多く、彼らと仲良くなっていろいろな話をしてみると、全然仕事がない。また、関西にいるのに仕事のほとんどを東京から受けているとのこと。一方で、周りのデザイナー達が日々仕事に追われている状況も同時に見ていて、この状況ってミスマッチを起こしているんじゃないかと感じました。イラストレーター・作家とデザイナー、クライアント。そしてエンドユーザーをもっとうまくつなぐことができれば、仕事やお金もきっと効果的に回るし、モノづくりに向き合う時間も増え、全体のクリエイティブ力も上がっていく。結果、自分たちも成長していけるのではと考えました。

ondoで展示する際は、まず作家と打ち合わせをして、今後どうしていきたいのか、まず目標や方向性を共有するところから始めます。そこから逆算し、目標に近づくためには、今回どのような展示や取り組みがいいのかと順序立てて考えていきます。作家の想い・ポリシーなど軸の部分を大切にしながら、同時に社会・エンドユーザーのニーズを頭の中で照らし合わせながら、こんな表現や発信ができれば、今後の展開につながるのではという提案もします。普段、デザイン案件の中でクリエイティブディレクターという役割を担い、クライアント相手に対話を重ねていくのとかなり近いプロセスを踏んでいきます。

優秀なデザイナーや編集者とのマッチングを
生み出していくのも役割のひとつ

ondoで展示する人は、イラストレーターもいれば作家と呼ばれる人たちもいます。時代の変化の中で、イラストレーション・アートという言葉の持つ意味や範囲も変化し、境界はより曖昧になってきています。カテゴリーではなく、自分たちの価値基準の上で、誰と何をやるのかということの積み重ねにより、改めて定義していければと考えています。

ここ最近の傾向として、特に作家からの相談が増えてきています。作家を取り巻く環境も時代の変化に応じ変化する中、活動がより難しくなっている状況もあるのだと思いますし、その中で、デザイン&編集のスキルが求められ始めていることも大きいと思います。

そんな状況の中、作家活動を軸にイラストレーションへの展開やグッズやプロダクトへの展開など、ある程度の柔軟性を持って活動されている方々が、よりスピード感を持って進まれていると感じています。共通している点としては、自身の軸をきちんと持った上で、イラストレーションやプロダクトとの距離感・関わりを、自覚的に取り組まれているという部分です。

そういう方々は展示を通し、自身の感性を丁寧に伝え、作品を販売していく部分を大切にしています。その傍らイラストレーションとして、例えば本の装画を手がけることで、何万という人に自身の絵を見てもらい、そこから名前や絵柄を知ってもらうことも。イラスト費用も発生し、作家としての制作活動に向き合う時間も増えるという、いい循環を生み出しておられるように感じています。きちんと軸を持ちながらも、自分なりのバランス感を見つけ、柔軟に取り組んでいくことが大切なんだろうなと。作家が生み出すイラストレーションの力強さからは、イラストレーター側からも学べることがとても多いように感じています。

誤解されている部分として、イラストレーションって、いわれたことをそのまま描くということではないんだという部分です。作家の作品へのアプローチと重なる部分もあると思うのですが、イラストレーションでも、仕事に対して自分なりに共感やコミットできる部分を見つける工程ってやっぱり大切で、そのプロセスを経て、上がってきたビジュアルって、デザイナー側からしてもやっぱりワクワクするし、結果、エンドユーザーまで、そのワクワク感って引き継がれると思うんです。

実際、優秀なデザイナーや編集者は、そのあたりを見極めてたり、引き出していくことが秀逸な方が多いですね。この人ならこんな表現が好きかなとか、作家性や個性を発揮できるスイッチのようなものを探り当てる能力というか。
同時に、エンドユーザーへの視点を元に、クライアントとの関係性もしっかり構築されているので、仕事がスムーズに運ぶことが多いように感じます。ondoとしては、今後こういう方とのマッチングを数多く生み出していくのも役割のひとつだと考えています。

インタビュー後半は、近日公開! 公開のご案内はSNSまたはメルマガにて。

G_GRAPHICS INC. クリエイティブディレクター池田敦インタビューvol.1「社会とのつながりにこだわった、 デザイン会社が仕掛けるギャラリー戦略。」

池田敦さん

G_GRAPHICS代表。クリエイティブディレクター。1978年、滋賀県生まれ。デザイン専門学校卒業後、印刷会社、デザイン会社、広告代理店を経て09年7月に、デザイン会社G_GRAPHICSを設立。主に企業・地方自治体・社会福祉法人など幅広くクライアントに持ち、ブランディング・プロモーション企画・デザインワークを手掛ける。13年に大阪・土佐堀にて、ギャラリーondoをオープン。17年には東京・清澄白河にてondo STAY&EXHIBITIONをスタート。18年より、くらしごと市を立ち上げ。大阪・東京の2拠点を行き来し、様々なクリエイティブワークや、作家・イラストレーターと社会をつないでいくプラットフォーム作りに力を入れている。

http://www.g-graphics.net/